2025年6月20日(金)8:30発表 日本 消費者物価指数(全国)2025年5月分## 【1】結果:生鮮食品の低下が見られる一方でコア・コアコアインフレが強い【図表1】2025年5月の全国消費者物価指数(CPI)の結果出所:総務省よりマネックス証券作成2025年5月の全国消費者物価指数(CPI)は、ヘッドラインである総合指数が前年同月比3.5%上昇と、前回4月から0.1ポイント低下となりました。市場予想は同3.5%と一致し、生鮮食品のインフレ鈍化に寄与した結果となりました(図表1)。【図表2】コアCPIの寄与度分解(前年同月比、%、%ポイント)出所:総務省よりマネックス証券作成生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)は、同3.7%の上昇となり、3ヶ月連続で伸びの加速が確認されました。図表2からもわかるように、エネルギーや財、サービスの寄与は概ね横ばいである一方で、食料の伸びが大きかったことが寄与しコア指数を押し上げています。食料は、足元では備蓄米の流通等により価格低下の兆しが見られるものの、コメが前年同月比101.0%増と高い伸びとなったことが影響しています。また変動性の高い生鮮食品・エネルギーを除いた総合指数(コアコアCPI)は同3.3%とこちらも、3%を超える高いインフレ率が続いており、食料インフレが波及しています。【図表3】コアCPI構成品目 前年同月比上昇・下落品目数の割合(レンジ別、%)出所:総務省よりマネックス証券作成上昇品目・下落品目をみると、コアCPIを構成する522品目のうち5月は421品目が上昇、37品目が下落、64品目が変わらずとなりました。4%以上上昇する品目シェアがトップとなり、高い伸びとなる品目が増えてきていることが示唆されます(図表3)。## 【2】内容・注目点:サービスを構成する品目において高インフレ品目が増えてきている【図表4】サービスインフレの寄与度分解(前年同月比、%、%ポイント)出所:総務省よりマネックス証券作成人件費とも関連の深いサービスCPIは前年同月比1.4%上昇と、前回4月から0.1%ポイント伸びが加速しました。2025年に入って一進一退での推移となっていますが、サービスのインフレ基調が弱まっている様子はないと考えられます(図表4)。【図表5】2025年5月の一般サービス構成品目の前年同月比変化率ヒストグラム出所:総務省よりマネックス証券作成より賃金への波及効果が期待される一般サービスを構成する品目(一般の企業等による外食や家事関連、教育、医療サービス等で構成される指標)において、今回5月のデータでは高いインフレ率を記録した品目が数多く見られたことがあげられます。具体的には、前年同月比4%以上の上昇が確認された品目は、一般サービスを構成する品目の約4割を占めており、高い物価上昇率が見られています。一方で0%未満の品目も一定割合確認できるもの、品目ベースで過半数は2%を超えており、サービスインフレの基調が継続していると言えるでしょう(図表5)。## 【3】所感:中東情勢の激化はコストプッシュインフレ再燃リスク、円高意図した利上げもありうる【図表6】原油価格と関連する輸入物価の推移出所:Bloomberg、日本銀行よりマネックス証券作成。輸入物価指数は円ベースコメを中心とした食料インフレは、備蓄米の流通等から次第に減速する公算が高いでしょう。一方で、足元では中東情勢の激化による資源価格の高騰が懸念される状況です。執筆時点の6月20日時点では、米国による対イランへの強硬姿勢もみられ(これがどう転ぶかは未知数であるものの)、平常への回帰は時間がかかる可能性があります。当然、長期化すれば物価上昇リスクの高まりが意識され、足元では緩やかに低下基調であった資源関連の輸入物価に上昇圧力がかかるでしょう(図表6)。国内ではガソリン代への補助金等が議論されており、消費者物価への波及を和らげる効果があるものの、エネルギー資源の輸入依存度が高い日本では、再びコストプッシュによる物価上昇が懸念される状況です。このケースによるインフレ加速時には(それを目的とした実施とは説明されないものの)円高を意図した早期利上げの可能性が高まると考えられます。マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太
【日本】2025年5月のコアCPIは前年同月比3.7%上昇 コメは同101%上昇 | 日本とアメリカの重要な経済指標を分かりやすく解説 | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア
2025年6月20日(金)8:30発表
日本 消費者物価指数(全国)2025年5月分
【1】結果:生鮮食品の低下が見られる一方でコア・コアコアインフレが強い
【図表1】2025年5月の全国消費者物価指数(CPI)の結果
出所:総務省よりマネックス証券作成
2025年5月の全国消費者物価指数(CPI)は、ヘッドラインである総合指数が前年同月比3.5%上昇と、前回4月から0.1ポイント低下となりました。市場予想は同3.5%と一致し、生鮮食品のインフレ鈍化に寄与した結果となりました(図表1)。
【図表2】コアCPIの寄与度分解(前年同月比、%、%ポイント)
出所:総務省よりマネックス証券作成
生鮮食品を除く総合指数(コアCPI)は、同3.7%の上昇となり、3ヶ月連続で伸びの加速が確認されました。図表2からもわかるように、エネルギーや財、サービスの寄与は概ね横ばいである一方で、食料の伸びが大きかったことが寄与しコア指数を押し上げています。食料は、足元では備蓄米の流通等により価格低下の兆しが見られるものの、コメが前年同月比101.0%増と高い伸びとなったことが影響しています。
また変動性の高い生鮮食品・エネルギーを除いた総合指数(コアコアCPI)は同3.3%とこちらも、3%を超える高いインフレ率が続いており、食料インフレが波及しています。
【図表3】コアCPI構成品目 前年同月比上昇・下落品目数の割合(レンジ別、%)
出所:総務省よりマネックス証券作成
上昇品目・下落品目をみると、コアCPIを構成する522品目のうち5月は421品目が上昇、37品目が下落、64品目が変わらずとなりました。4%以上上昇する品目シェアがトップとなり、高い伸びとなる品目が増えてきていることが示唆されます(図表3)。
【2】内容・注目点:サービスを構成する品目において高インフレ品目が増えてきている
【図表4】サービスインフレの寄与度分解(前年同月比、%、%ポイント)
出所:総務省よりマネックス証券作成
人件費とも関連の深いサービスCPIは前年同月比1.4%上昇と、前回4月から0.1%ポイント伸びが加速しました。2025年に入って一進一退での推移となっていますが、サービスのインフレ基調が弱まっている様子はないと考えられます(図表4)。
【図表5】2025年5月の一般サービス構成品目の前年同月比変化率ヒストグラム
出所:総務省よりマネックス証券作成
より賃金への波及効果が期待される一般サービスを構成する品目(一般の企業等による外食や家事関連、教育、医療サービス等で構成される指標)において、今回5月のデータでは高いインフレ率を記録した品目が数多く見られたことがあげられます。
具体的には、前年同月比4%以上の上昇が確認された品目は、一般サービスを構成する品目の約4割を占めており、高い物価上昇率が見られています。一方で0%未満の品目も一定割合確認できるもの、品目ベースで過半数は2%を超えており、サービスインフレの基調が継続していると言えるでしょう(図表5)。
【3】所感:中東情勢の激化はコストプッシュインフレ再燃リスク、円高意図した利上げもありうる
【図表6】原油価格と関連する輸入物価の推移
出所:Bloomberg、日本銀行よりマネックス証券作成。輸入物価指数は円ベース
コメを中心とした食料インフレは、備蓄米の流通等から次第に減速する公算が高いでしょう。
一方で、足元では中東情勢の激化による資源価格の高騰が懸念される状況です。執筆時点の6月20日時点では、米国による対イランへの強硬姿勢もみられ(これがどう転ぶかは未知数であるものの)、平常への回帰は時間がかかる可能性があります。当然、長期化すれば物価上昇リスクの高まりが意識され、足元では緩やかに低下基調であった資源関連の輸入物価に上昇圧力がかかるでしょう(図表6)。
国内ではガソリン代への補助金等が議論されており、消費者物価への波及を和らげる効果があるものの、エネルギー資源の輸入依存度が高い日本では、再びコストプッシュによる物価上昇が懸念される状況です。このケースによるインフレ加速時には(それを目的とした実施とは説明されないものの)円高を意図した早期利上げの可能性が高まると考えられます。
マネックス証券 フィナンシャル・インテリジェンス部 山口 慧太