米国がイランを空爆、株式市場に与える影響は?イランの出方に世界が注視 | 岡元兵八郎の米国株マスターへの道 | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア

2025年6月第3週(6月16日週)の米国株式市場は、週初には比較的落ち着いた値動きを見せていたものの、週末にかけてその様相は一変しました。

イランへの対応について「2週間以内に判断する」としていたトランプ米大統領が、期日を待たず、日本時間の6月22日(日)早朝、米軍によるイランの核関連施設への空爆を断行したのです。この突然の軍事行動により、中東地域の緊張は一気に高まり、これまで市場が「潜在リスク」として認識していた地政学的懸念は、一夜にして「現実の衝撃」へと変貌しました。この決断は、トランプ米大統領がアメリカに多大なリスクを背負わせる「極めて危うい賭け」に出たことを意味します。

中東緊張と利下げ期待が交錯した先週(6月16日週)の米国株市場

先週(6月16日週)の市場が週明けにかけて比較的安定して推移したのは、直前の中東情勢に一定の落ち着きが見られたこと、そして利下げ期待が再燃したことが背景にあります。とりわけ、イラン政府高官がウラン濃縮を巡る交渉に前向きな姿勢を示したことは、対立の激化を回避する動きとして好感されました。

さらに、FRB(米連邦準備制度理事会)のウォラー理事が、「インフレ鈍化が持続すれば、7月にも利下げが視野に入る」と明言したことで、金融政策への期待が株式市場の支えとなりました。こうしたポジティブ要因が重なり、地政学的な不安材料が一時的に後退したことから、投資家心理は一定の安堵感に包まれました。

とはいえ週を通じてみると、市場はやや方向感に欠ける展開となりました。S&P500種株価指数は週間で0.15%の下落、ナスダック100指数は0.02%安と、いずれもわずかな調整にとどまり、実質的には横ばいでの着地となっています。

FOMC後は方向感に乏しい展開に

6月19日(水)にはFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催され、市場の予想通り政策金利は据え置かれました。同時に公表された「ドットチャート(政策金利見通し)」では、年内に2回の利下げが示され、市場はこれを「ハト派寄り(金融緩和的)」と受け止めました。

しかしながら、パウエルFRB議長は記者会見で「インフレが持続的に低下しているという明確な証拠が必要だ」と述べ、慎重な姿勢を崩しませんでした。そのため、利下げを急ぐ姿勢とは受け取られず、やや様子見ムードが広がりました。さらに、小売売上高など経済指標の一部が予想を下回ったことから、景気減速への懸念が再燃し、週の後半には一部利益確定の売りも見られました。

「現実化」した中東の地政学リスク、抑止か報復か…イランの出方は?

そして、6月22日(日)の朝、米国がイラン国内の核関連施設に対して空爆を実施したとのニュースが飛び込んできました。ホワイトハウスで演説を行ったトランプ米大統領は、「イランの主要核施設は完全に破壊された。イランが報復に出た場合には、さらなる攻撃を受けることになる」と発言しました。

米国の軍事行動は、6月12日から始まったイスラエルによる作戦「ライジング・ライオン」と連携した形で実行されたとされ、事前にイランの防空システムが徹底的に破壊されていたことが、作戦成功の鍵となった模様です。

この空爆が中東の緊張を一時的に解消する「終わりの始まり」となるのか、それとも報復と混乱の連鎖を招く「新たな段階の幕開け」となるのかは、今後のイラン側の対応に大きく左右されます。イランのアッバス・アラグチ外務大臣は、「アメリカは今回の武力行使により平和的な対話のチャンスを吹き飛ばした」と非難し、報復を示唆しています。

米NBCの報道番組に出演したバンス米副大統領は、「我々はイランそのものと戦っているのではなく、核開発計画と戦っている」と発言し、外交解決の意志を示しました。ヘグレス米国防長官も「体制転換を目的とした作戦ではない」と強調しましたが、トランプ米大統領がその数時間後、自身のSNSで「イランを再び偉大な国にできないのであれば、なぜ体制転換があってはいけないのか?」と問いかけ、「MIGA(Make Iran Great Again)=イランを再び偉大な国に」というスローガンで投稿を締めくくりました。

現時点では情勢が極めて流動的であり、予断を許さない状況が続いています。

株式市場に与える影響、想定されるネガティブ・シナリオは?

では、これが株式市場に与える影響を考えてみましょう。先週(6月16日週)後半にはVIX指数(恐怖指数)は20を超え、地政学的リスクが投資家心理を冷やしていることが示されました。しかし、過去の中東危機を見ても、短期的なショックに株価が下落した後にはマーケットが回復軌道に乗る傾向があるため、今回も同様のパターンとなる可能性は否定できません。

興味深いことに、イスラエルMSCI株価指数は、6月13日(金)にイスラエルがイランへの先制攻撃を開始して以降、2.6%上昇し、史上最高値を更新しています。同指数は、ハマスによる2023年10月7日の攻撃(約1,200人のイスラエル人が殺害され、約250人が人質となった)の20日後にあたる10月27日を起点として、すでに79.9%の上昇を記録しています。

中東情勢の地政学的な展開を正確に予測するのは極めて困難ですが、このイスラエル株式市場の強さは、イランの核兵器開発能力が抑止されたことを受けて、地域の構造的転換が始まった可能性を示唆していると考えられます。マーケットは単なる一時的な軍事的衝突ではなく、より長期的かつ根本的な地政学的再編の兆しを織り込み始めているのかもしれません

それでも、いくつかのネガティブ・シナリオは想定しておくべきです。

第一に、イランによる報復行動が懸念されます。イスラエルや中東にある米軍基地、または米国本土への直接攻撃、あるいはヒズボラやフーシ派といった代理勢力による間接的な攻撃が行われる可能性もあります。ミサイルやドローン、さらにはサイバー攻撃も選択肢となるでしょう。

次に、原油価格の高騰がグローバル経済に与える影響も見逃せません。世界の石油需要の2割が通過すると言われるホルムズ海峡周辺の緊張が続けば、原油供給の不安が増し、価格がさらに上昇するリスクがあります。実際、6月に入ってからすでに原油価格は20%以上上昇しており、インフレ圧力の再燃が懸念されます。

さらに、FRBの金融政策にも影を落とす可能性があります。インフレ再加速により、7月の利下げ期待が後退すれば、株式市場への逆風となる恐れがあります。

地政学リスクが市場を揺るがす局面、投資家に必要な姿勢とは?

こうした不確実性の高まる局面では、つい目先の値動きに一喜一憂してしまいがちです。しかし、だからこそ冷静な視点を保ち、中長期的な投資スタンスを崩さないことが何より重要です。

過去を振り返れば、地政学的リスクが市場を一時的に揺るがす場面は幾度となくありました。それでも、その都度マーケットは回復し、長期的な成長トレンドを取り戻してきました。今回のような事態においても、感情に流されず、状況を客観的に見極める姿勢が求められます。

米国株への投資については、外部環境の変化に過度に振り回されることなく、長期的な視野でマーケットを捉えることが、最終的な投資成果を左右する決定的な要因になるという認識を持っていただきたいと思います。

内容は参考用であり、勧誘やオファーではありません。 投資、税務、または法律に関するアドバイスは提供されません。 リスク開示の詳細については、免責事項 を参照してください。
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