アメリカのデジタル資産イノベーションにおけるグローバルリーダーシップの確立が目前に迫っている。来週、上院は「GENIUS Act」（Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act）の最終採決を行う。この画期的なステーブルコイン法案は、成立に向けて一歩前進する。上院での可決後、法案は下院へ送られ審議される。これは暗号資産（仮想通貨）業界のみならず、アメリカの消費者、投資家、そして米ドルのグローバルにおける強さにとっても大きな前進となる。
アメリカのドル覇権はステーブルコインが左右する──世界はアメリカの決断を待たない | CoinDesk JAPAN（コインデスク・ジャパン）
ステーブルコイン法案の採決は、金融におけるドル覇権とアメリカの価値観による統治が続くことを確かなものにするとクリスティン・スミス（Kristin Smith）氏は述べた。
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アメリカのデジタル資産イノベーションにおけるグローバルリーダーシップの確立が目前に迫っている。来週、上院は「GENIUS Act」（Guiding and Establishing National Innovation for U.S. Stablecoins Act）の最終採決を行う。この画期的なステーブルコイン法案は、成立に向けて一歩前進する。上院での可決後、法案は下院へ送られ審議される。これは暗号資産（仮想通貨）業界のみならず、アメリカの消費者、投資家、そして米ドルのグローバルにおける強さにとっても大きな前進となる。
数字がすべてを物語っている。現在、1900億ドル（約27兆5500億円、1ドル145円換算）超の米ドル連動型ステーブルコインが世界中で流通しており、その規模は年々倍増している。ステーブルコインは投機的な暗号資産ではなく、世界中どこへでも瞬時に低コストで送金できる「デジタルドル」だ。通貨価値の下落や権威主義的な金融統制に直面している地域では、ステーブルコインは米ドルの経済的安定性へのアクセス手段となっている。これはイノベーションを推進する存在であるのみならず、民主主義を促進する存在でもある。
GENIUS Actは、業界が求めていた明確なルールを提供する。合理的なガイドラインを定めることで、GENIUS Actは、ステーブルコインが高品質な流動性資産、定期的な監査、明確な償還権を通して安定した価値を維持することを保証する。こうしたことは過度な規制ではなく、すでに責任ある発行者が実践している合理的な保護施策だ。
最も重要なのは、GENIUS Actが「確実性」をもたらし、責任あるイノベーションの発展を可能にし、不正行為によるシステム破壊を防ぐことだ。
GENIUS Actの法制化は急務だ。他国が中央銀行デジタル通貨（CBDC）やドル覇権を回避するための代替決済システムを開発する中で、アメリカは選択を迫られている──すでにドルをグローバルに広げているイノベーションを受け入れるか、それともこの分野の主導権を他国に譲るのか。GENIUS Actは、必要な枠組みを提供する。つまり、強固な準備金要件、透明性に関するルール、消費者保護を備えつつ、ステーブルコインの強みであるイノベーションを阻害しない枠組みだ。
この法案に関する進展は超党派であり、この技術がアメリカの国益に資するという認識が議会全体に広がっていることを示している。共和党は自由市場のイノベーションと政府介入の縮小を重視し、民主党は金融包摂と消費者保護の側面を評価している。両党とも、ドル覇権の維持は党派的な問題ではなく、「愛国的行動」だと理解している。
世界ではすでに、ステーブルコインは大きな変化をもたらしている。インフレ率が100％を超えるアルゼンチンでは、人々は資産を守る手段として米ドル建てステーブルコインを利用している。ウクライナでは、人道支援団体が伝統的な銀行が機能しない中、即時に支援を届ける手段として活用している。アフリカや東南アジアでは、起業家が米ドルの流動性にアクセスし、グローバル経済とつながるビジネスを構築している。こうした1件1件のトランザクションが、米ドルを世界の基軸通貨としてさらに強化している。
テクノロジー関係者は、この問題の重要性を理解している。だからこそ、伝統的金融機関からシリコンバレーのスタートアップまで、あらゆる規模の企業がステーブルコインについての明確なルールを求めている。求めているのは「緩やかな規制」や「特別扱い」ではない。アメリカ国内で開発し、アメリカの利益になり、アメリカの金融的リーダーシップをグローバルに広げるための明確なルールだ。
その一方で、毎月のように、多くのステーブルコイン関連の取り組みが海外に流出し、多くのイノベーションがアメリカ国外で生まれ、主導権がライバルに移っている。EUはすでにステーブルコインのガイドラインを定め、シンガポール、UAEなども、ステーブルコイン関連の取り組みを誘致するための枠組みを打ち出している。
米ドル建てステーブルコインは、FRB（連邦準備制度理事会）と競合するものではなく、その影響力を広げるものだ。アメリカの銀行を弱体化させるものではなく、新たな顧客を生み出す。金融における監視を弱めるものではなく、プログラマブルなコンプライアンスとリアルタイムな透明性を通じて、監視をより効果的なものにする。ステーブルコインは基礎となるインフラであり、イデオロギーではない。
GENIUS Actの可決に、莫大な予算や官僚主義的な複雑さは必要ない。GENIUS Actはシンプルに、アメリカのイノベーションが発展するための明確なルールを提要し、消費者を守り、ドルのグローバルな影響力を強化する。
議会へのメッセージは明確だ──この瞬間を逃すな。世界はアメリカの決断を待ってくれない。GENIUS Actは、グローバル金融の未来は、ドルによる覇権とアメリカの価値観による統治が続き、比類なきアメリカの創造性によって支えられることを確実なものにする。
｜翻訳・編集：CoinDesk JAPAN編集部
｜画像：Shutterstock
｜原文：America’s Dollar Dominance Depends on GENIUS